業務継続計画の未策定について【令和6年度報酬改定で減算されないための対策 その3】
2024.04.16 #報酬・加算・減算その3.業務継続計画の未策定による減算
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に含まれる減算措置の新設/見直し。 今回は「業務継続計画未策定減算」について、内容と報酬減算の回避方法を解説します。
この記事の目次
業務継続計画(BCP)と、未策定の減算
感染症や自然災害に備えた業務継続計画の作成が今回の改訂で義務化されました。
コロナなど感染症の流行や豪雨・地震など自然災害の被害を受けても、障害福祉サービスを中断させないため、そして中断した場合は速やかに復旧させるために体制を作って備えることを、業務継続計画またはBCP(Business Continuity Plan)と言います。
今後の運営指導等により指定障害福祉サービス事業所等でのBCP未策定が判明した場合、さかのぼって義務化開始の時点、つまり令和6年4月(※)から基本報酬が減算となります。
※経過措置として条件を満たす場合には一定の期間は減算が適用されません。
参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(厚生労働省)
業務継続計画未策定減算の減算単位
サービス類型によって所定単位数の3%または1%の減算になります。
・施設・居住系サービス(障害者支援施設、共同生活援助、等)
→所定単位数の3%を減算
・訪問・通所系サービス(短期入所、就労継続支援A/B型、等)
→所定単位数の1%を減算
業務継続計画未策定減算の基準
以下①、②の基準をいずれか1つでも満たさない場合に減算が適用されます。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
- 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること
何が減算の算定要因になるのか、施設・事業所は具体的にどうすればよいのかを順に見ていきましょう。
基準①感染症と非常災害に対する業務継続計画を策定する
減算の算定要因:感染症と自然災害のいずれか、または両方の業務継続計画を作っていない
減算されないためには、
以下(1)~(4)のポイントに沿って、2種類のBCPを作成します。
・感染症発生時のBCP
・自然災害発生時のBCP
(1)ひな形を使ってBCPを作成・BCP作成を支援するために、厚生労働省がBCPひな形、ガイドライン、研修動画などを公開しています。ひな形とガイドラインを使えばBCP作成は難しくありません。
詳しくは以下の厚生労働省ホームページをご確認ください。
「障害福祉サービス事業所等における業務継続ガイドライン等について」
・ひな形に記入する内容は、施設・事業所内でしっかり協議しましょう!
概要を以下(2)~(4)にまとめました。 (2)BCPの主なポイント(共通事項)【発生時にどう行動するかを決め、事前に準備しておく】
・責任者・担当者の決定、職員緊急連絡網、連携する関係各所の連絡先
・情報発信の方針
・備蓄品リスト
・定期的な研修・訓練の実施計画(基準②)
・定期的なBCPの見直し
(3)感染症BCP【感染(拡大)防止と、職員の確保】
・感染者の診療等を実施する協定締結医療機関との連携体制
・入居者と職員の感染防止対策と、感染予防に必要な備品
・優先業務の選定(職員不足や長期化を想定)
・職員確保体制(応援依頼先など)
・職員の過重労働・メンタルヘルス対策
参考:障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省)
(※厚生労働省のガイドラインは新型コロナウイルス感染症を対象としたものですが、BCPは感染症の種類にかかわらず共通です。)
(4)自然災害BCP【防災計画と共通・関連する安全確保】
・ハザードマップの確認
・インフラ等の被災想定(自治体の想定、地域レベル)
・災害時業務(安否確認・応急救護・初動対応など)
・避難経路、避難方法、避難場所と、緊急時対応拠点
・施設・設備の安全対策(耐震固定、ガラス飛散防止フィルムなど)
【BCPによる障害福祉サービスの継続】
・インフラ等の被災想定(自施設への影響、時系列)
・インフラが停止した場合のバックアップ(自家発電、簡易トイレなど)
・優先業務の選定(自施設インフラの被災状況別)
・職員の参集基準(連絡できない場合の出勤する・しないの判断ルール)
・職員の休憩・宿泊場所の確保
・復旧対応(施設の破損個所確認シート、各種インフラ業者連絡先一覧)
・他施設や地域ネットワークとの連携
参考:障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省)
(※厚生労働省のガイドラインは地震・水害を主な対象としていますが、風害・竜巻・落雷・雪害等の発生が想定される地域においては、それぞれの災害が引き起こす被害を想定して応用しましょう。)
基準②業務継続計画に従い必要な措置を講じる(研修と訓練)
減算の算定要因:策定した業務継続計画を実行するための研修と訓練を実施していない
減算されないためには、
実際に感染症や自然災害が発生した際にBCP通りに行動できるように、
BCPの研修と、BCPの訓練(シミュレーション)を、それぞれ年に1回以上実施し、記録を作成・保存します。
研修と訓練のポイント:
・全職員が参加できるようにする(参加できなかった職員への周知、新規採用時に別途研修を行う)
・感染症と自然災害、両方のBCPを含める、もしくはそれぞれ実施する
・感染症BCPの研修・訓練は、別の感染症対策(同じく令和6年度から義務化された「感染症対策の強化に係る取組み」による感染症対策委員会)と一体的に実施してもよい
基準としては訓練の手法は問われないので机上のシミュレーションでもOKですが、機械操作や避難・安否確認などはできるだけ実際に試しておきましょう。
その他の必要事項:運営規程への業務継続計画の記載と届け出
令和6年度4月から、事業所の運営規程にBCPの策定に関する事項を記載することが義務づけられました。直接の減算基準ではありませんが、必ず対応する必要があります。
・BCP策定と研修等の定期的な実施についての文言を運営規程に加え、役所に届け出をしましょう
参考:運営規程の記載例(厚生労働省資料より)
※運営規程への記載義務についてはBCP以外の項目もあります。運営基準に関する各自治体の条例等もご確認ください。
以上、業務継続計画未策定減算の基準と、減算にならないための方法でした。
厚生労働省のガイドラインとひな形を使い、できるだけ早くBCPと研修・訓練計画を作ってください。
最初から完璧にしようと気負わず、まずは作ってみて、定期的な見直しで徐々に改善していけばよいでしょう。
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