【意外と多い開業失敗】障害者グループホームの失敗事例と改善策

2021.06.22 #開業#開業ノウハウ公開


新型コロナウイルス感染症の影響による経営難は、障害福祉事業にも迫っている昨今。 東京商工リサーチ(※1)によると、2020年の「障害者福祉事業」の休廃業・解散は107件と大幅に増加。

このデータからは詳しい事業内容を知ることはできませんが、入所系・通所系・訪問系のいずれも苦境に立たされていることでしょう。

今回はその中でも「障害者グループホーム」の経営状況をピックアップし、経営悪化や指定取り消しなどの事例を紹介します。

障害者グループホームの経営難に対する改善策も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

障害者グループホームの経営状況からみる開業失敗例

まずは障害者グループホームの経営状況を見ていきましょう。

次の表は独立行政法人・福祉医療機構(WAM)が発表した2018年度の障害者グループホーム経営状況の一部です。

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2018年度障害者グループホーム経営状況

まず目に留まるのは「赤字施設の多さ」ではないでしょうか。

施設の形態にもよりますが、少なくとも3件中1件の割合で赤字経営に陥っていることがわかります。

その原因は大きく分けると、次の2つが考えられます。

赤字経営の原因①人件費の見積もりが甘かった

施設ごとの平均は大きな違いがなかったものの、内訳に顕著な差が出た項目があります。

それは「人件費率」です。

赤字施設の原因として、人件費が経営を圧迫しているケースが多いといえるでしょう。

また、赤字施設の割合に同調するように、1人当たりのサービス活動収益が少なくなる点も気になります。

人件費は実務経験や有資格者の割合によっても変わるため、一様に比較できるものではないでしょう。

しかし、提供できるサービスや有資格者割合などは、開業時に入念な検討を重ねるため、開業後の大きな方向転換はあまり考えられません。

そのため、赤字経営となってしまった原因としては、

・サービス活動収益の見込みが甘かった

・人件費の割合の高さを重視していなかった(利益がもっと出ると想定)

ということが考えられます。

赤字経営の原因②人員の配置、雇用形態が適切でない。

黒字施設と赤字施設とで利用率に大きなさは見られません。

前述の人件費率に加え、赤字施設は1人当たりの人件費も高いです。赤字施設は高い給与、多い人員配置によって、人件費が利益を圧迫していることが想像できます。

適切な人員配置(4対1なら利用者4名に常勤1名のみ)をすれば利益は出る構造になっていますが、利用者の区分に応じた正しい人員配置をしないと利益を圧迫してしまいます。

他にも正社員と扶養内パート社員を比較したとき、社会保険料の有無、深夜割増の金額が異なるので、実際の人件費で1.2~1.5倍ほど変わってきてしまいます。

正社員やパート社員の使い分けなど適切な人件費管理が必要でしょう。

赤字施設が多い実情の裏では「需要が高いからもっと儲かると思った」といった声も聞かれました。

このような安易な発想で開業してしまっては「赤字施設となるのも、やむなし…」と感じる方も多いのではないでしょうか。

障害者グループホームの指定取り消しからみる開業失敗例

次に、指定取り消された例を見ていきましょう。

ここでは不正請求のような悪質なケースは除き、取消処分に至った原因を紹介していきます。

指定取り消しの原因としてよく挙げられるのは、次のようなケースです。

(悪質な不正ではなく、失敗例としての内容となります。)

 ①施設設置の場所や建物に関する虚偽・基準の未達

 ②有資格者・業界経験者の不足

 ③開業支援業者とのトラブル

それぞれ詳しくみてみましょう。

①施設設置の場所や建物に関する虚偽・基準の未達

  

本来であれば、物件の許可基準を満たしていない場所では開業できません。

しかし、申請時に虚偽の報告をしたり、基準を満たさないまま開業したりしたケースがあります。

本人に悪意がなくても間違っていれば虚偽となりますので、ルールをしっかり理解しておく必要がありますよね。

所定の手続きによって開業可能となることもありますが、大抵の場合は開業後に指定取り消しとなります。

②有資格者・業界経験者の不足

介護業界の人手不足は深刻であり、それは障害者グループホームも同様です。

そのため、有資格者や業界経験者をはじめとした人材の確保が難しく、そのまま開業してしまったケースがあります。

指定申請時には採用できていたもののオープンまでの間に退職してしまい、開業時に有資格者不在という事例もあります。

③開業支援業者とのトラブル

障害者グループホームを開業する際、行政書士やコンサルティング、フランチャイズなど、開業支援業者を利用する場合が多いと思います。

しかし、その開業支援業者との間にトラブルが発生し、指定取り消しに至った(そもそも指定を受けられない)ケースもあります。

具体的には、

 ・開業支援事業者に依頼したが、その後の事業主の対応に問題があった

 ・開業支援業者の知識不足や事業主へのフォロー不足

といった2パターンが挙げられます。

このような状況になった原因としては、次のようなものが考えられるでしょう。

✓事業主が安易に開業に乗り出した

✓両業者間の連携が取れていなかった

✓開業支援業者が実務に必要なレベルに達していなかった

✓両業者間の契約がずさんだった

また、実現性の低いシミュレーションを元に開業し、採算が合わずに赤字経営となった事業者もいます。

障害者グループホーム開業で失敗しないための改善策

赤字経営・指定取り消しにならないためには、どちらも開業前に時間をかけて十分に検討・準備することが大切です。

「そんなこと、当然だ」と思う方も多いことでしょう。

しかし、需要の高さから安易に参入する事業主が少なくありません。

そのような事業主が多くなっていることに味をしめ、安易な契約に至ってしまう開業支援業者においても同じことがいえるでしょう。

事業主に必要なスキルや経験が乏しく、開業支援業者からのフォローアップも不十分なまま指定申請する場合もあります。

たとえ指定申請が通ったとしても、将来的に赤字経営や指定取り消しに合うことは想像に難くありません。

このような理由から、障害者グループホームの一部では開業に失敗する事業主が続出しているのです。

では、どう改善すればいいのでしょうか。

まずは、基礎的な部分をしっかりと押さえることが肝心です。

具体的には、

・障害者グループホームの現状を実際に視察・把握する

・開業の指定準や法令などを正確に把握する

・実現可能な事業プランを立てる

・試算シミュレーションはリスクや実情を踏まえたものにする。

・スケジュールに余裕を持たせた開業準備(人材採用、加算申請など)

・業界経験者の採用、またはアドバイス

などが挙げられるでしょう。

しかし、実際の指定申請では物件を入手し消防法を満たす、運営に必要な各設備を用意するなど、開業準備にかかる労力は大きいです。

また、クリアする必要がある指定基準や報酬体系などは複雑。

条例によって自治体ごとの対応が異なることもあります。

未経験者にはハードルが高い手続きや内容が非常に多く、やはり新規参入の場合は開業支援事業者を利用したいところです。

開業支援事業者を選ぶときには、十分な実績があることが確認できると、安心して相談することができるでしょう。

しかし、状況が変わることもあるため、全面的に頼るのではなく、事業主自身も指定申請や経営における知識を深めておくことが大切です。

同時に、サービス活動収益アップに向けての検討・取り組みにも力を入れると、赤字経営を回避する一助となります。

まとめ

今回は障害者グループホームの開業失敗事例と改善策について紹介してきました。

内閣府「令和元年版 障害者白書」(※3)によると、国民のおよそ7.6%は障害を持つといいます(複数の障害を持つ事例も含む)。

障害者グループホームの需要は高く、社会的意義もあります。

多くの業者が参入すれば、業界全体のサービス向上も期待できるのではないでしょうか。

しかし、実態は厳しく、理想には程遠いのが現状です。

今回紹介した改善策を実践して、障害者グループホームの経営を安定化させていきましょう。

参考文献

(※1)出典:東京商工リサーチ

2020年「障害者福祉事業」倒産と休廃業・解散調査

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210304_01.html

(※2)参照元:独立行政法人・福祉医療機構(WAM)

2018 年度 居住系障害福祉サービスの経営状況について

https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/200330_No019.pdf

(※3)参照元:内閣府「令和元年版 障害者白書」

https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r02hakusho/zenbun/index-w.html