【障害福祉の基礎】常勤換算は休憩時間を含んでいい?!常勤換算と休憩時間の考え方を徹底解説
2021.02.03 #経営について先日、九州でグループホーム開業予定のお客様からこのような話を聞きました。
「申請書を提出したのですが、行政担当者から勤務形態一覧について『勤務時間には休憩時間も含めないといけないから時間の書き方が違う』と言われました。それはおかしいんじゃないかと思いましたが、そう言って聞かないので直しましたが…。どうなんでしょう?」
皆さんはこの疑問の意味がわかりますでしょうか?
既に申請書を提出された方は「何それ、行政意味不明じゃん」と思うかもしれませんし、まだ申請書をつくったことがない方は「?」かもしれません。
こちら解説します。
この記事の目次
2種類の勤務時間
まず障害福祉サービスを運営する際に「勤務時間」には、①労基法上の勤務時間と、②障害者総合支援法上の勤務時間、の2つの考え方があります。
労働基準法 : 労働条件の最低基準を定め、労働者を保護する法律です。
一方障害者総合支援法 : 障害のある人が基本的人権のある個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるように定めた法律です。
労基法上の勤務時間は労働者の実働時間を表すのに対し、障害者総合支援法上の勤務時間は、常勤換算上の労働時間を表しています。
では常勤換算上の労働時間とはどういった考え方なのか解説していきます。
常勤換算とグループホーム特有の考え方
障害者総合支援法上の勤務時間は「常勤換算」の計算をするときに使用する勤務時間の考え方です。
九州のとある行政担当者もこの考え方の話をしています。
「常勤換算」の意味がまだ分からない方、何となくわかるけど説明できるレベルまでではないかなという方は、福祉事業をするとき必ず付きまといますし、間違えると後々になって「支払った報酬を返してください」ということにもなりかねませんので、まず以下の記事で勉強してみてください。
常勤換算の簡単な解説(資料は介護ですが考え方は同じです)
「常勤換算」とは?用語の意味・計算方法を解説します! | なるほどジョブメドレー
グループホームの場合の具体的な考え方
障害者総合支援法に基づくグループホーム・ケアホーム設立サポート|常勤換算について
障害福祉サービスの常勤換算の具体例と計算方法
例えば14時~22時に勤務をした場合、拘束時間は8時間ですが、間に1時間休憩を入れた場合、勤務時間は8時間-1時間で7時間となりますよね。
常勤換算の延べ勤務時間として計上する勤務時間を
a「実際に働いた勤務時間」と考えると7時間であり、
b「休憩時間も含む勤務時間」と考えると8時間となります。
つまり、九州のお客様はaで資料を作って提出したところ、行政にbだと言われてしまったということです。
では、実際のルールはどうなっているのでしょう?
3つの考え方
今回改めて私も調べてみました。
いくつか行政ルールやネット記事を見てみると、主に3つの考え方がありそうだということがわかりました。
A.休憩時間は原則除く。
B.休憩時間は原則除くが、労基法上最低限必要な時間は含めても良い
C.休憩時間は原則除くが、労基法上最低限必要な時間は含めても良い。
ただし常時1名が勤務する事業所は休憩時間に他のスタッフを配置しないと法定休憩時間も含むことができない。
(通所介護などは交代で勤務に当たることができて休憩が取りやすいから休憩時間も常勤換算の計算に含めてもOKのようである。逆にGHなどワンオぺ施設では休憩時間に勤務者がいなくなるので、勤務時間にカウントされない。)
14時~22時勤務の場合で考えると…
A…8時間-1時間で7時間
B…7時間+45分で7時間45分 ※6時間を超えて8時間の労働時間の場合、法定休憩は45分のため
C…常時複数人が勤務の事業所は7時間45分、常時1名が勤務の事業所は7時間
となります。
ここまでの内容の理解は大丈夫でしょうか。
理解できていれば常勤換算の考え方は完璧です。
ちなみに九州のとある行政担当者の発言で考えるとAでもBでもCでもなく、
D.休憩時間は勤務時間にカウントする。14時~22時勤務なら8時間
ということなので、おかしいですよね。
A、B、C、それぞれの根拠資料をご紹介します。
Aの根拠資料
〇福井県の資料には…
「当該指定障がい福祉サービス事業所等において定められている「常勤の従業者が勤務すべき時間数」とは、原則として、就業規則に規定する所定労働時間(就業規則上の始業時刻から終業時刻までの時間(所定就業時間)から休憩時間を除いたものをいう。)とする。」とあります。
これはAですね。
Bの根拠資料
〇大分県の資料には…
「介護職員の勤務延時間を計算する場合、基本的に休憩時間は除いて算定するが、労働基準法第34条において最低限確保すべきとされている程度の休憩時間については、勤務延べ時間に含めてよい。」とあります。
これはBですね。
Cの根拠資料
〇WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)
↓書いてあることが難しいですが、要は「通常は労基法上必要な休憩時間は勤務時間に含めていいが、ワンオペ事業所はダメ」ということです。
これはCですね。
(独立行政法人福祉医療機構のサイトに遷移します)
※以下引用
「基準法第34条において最低限確保すべきとされている程度の休憩時間については、確保すべき勤務延時間数に含めて差し支えない。ただし、その場合においても、居宅基準第93条第3項を満たす必要があることから、介護職員全員が同一時間帯に一斉に休憩を取ることがないようにすること。また、介護職員が常時1名しか配置されていない事業所については、当該職員が休憩を取る時間帯に、介護職員以外で利用者に対して直接ケアを行う職員(居宅基準第93条第1項第1号の生活相談員又は同項第2号の看護職員)が配置されていれば、居宅基準第93条第3項の規定を満たすものとして取り扱って差し支えない。
このような取扱いは、通常の常勤換算方法とは異なりサービス提供時間内において必要な労働力を確保しつつピークタイムに手厚く配置することを可能とするなど、交代で休憩を取得したとしても必ずしもサービスの質の低下には繋がらないと考えられる通所介護(療養通所介護は除く)に限って認められるものである。
なお、管理者は従業者の雇用管理を一元的に行うものとされていることから、休憩時間の取得等について労働関係法規を遵守すること。
認知症対応型通所介護についても同様の考え方とする。」
結論:障害福祉・介護福祉における常勤換算≒職員を確保していた時間
BとCの事例は介護事業ですが、障害福祉と介護の人員要件に関する考え方は同じと考えて差し支えないかと思います。
また、Cは独立行政法人福祉医療機構という大きな公的な組織の回答なので、これに順守するのが適当かと考えます。
ちなみに有給、病欠、出張で実際に勤務をしていなかったとしても、常勤換算上の延べ勤務時間には含まれるそうです。
そう考えると常勤換算における延べ勤務時間とは、「実際に働いた時間」というよりか、「職員を確保していた時間」という解釈のほうがしっくりくる気もしますね。
ご参考になれば幸いです。