障害福祉サービスとは~利用対象者・種類・入所について徹底解説~
2023.12.25 #サービス種別解説障害者が受けられるサービスは大きく分けると「障害福祉サービス」と「地域生活支援事業」の2つがあります。「障害福祉サービス」は国全体で内容が定められているサービスである一方、「地域生活支援事業」は地域の事情に応じて市町村が独自で行うサービスです。
今回は「障害福祉サービス」をピックアップし、利用できる対象者やサービスの種類、申請の流れなどについて紹介します。
この記事の目次
障害福祉サービスとは”税金を財源としたサービス”
病気や怪我をした人が使う「医療」、高齢者が使う「介護」のように、行政の費用負担で利用できる障害者向けのサービスが「障害福祉」です。しかし、障害者福祉サービスは、医療保険や介護保険のような保険制度ではありません。
障害者福祉の財源は、市町村と都道府県の負担がそれぞれ25%、国庫の負担が50%。つまり、障害福祉サービスは「税金を財源としたサービス」なのです。
障害福祉サービスの需要~増え続ける障害者~
次の表は、厚生労働省が算出している障害者数の推移です。
身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | 合計 | |
2010年 | 366.3 | 54.7 | 323.3 | 744.3 |
2014年 | 393.7 | 74.1 | 320.1 | 787.9 |
2018年 | 436.0 | 108.2 | 392.4 | 936.6 |
単位:万人
この表を見るとわかるとおり、障害の種別にかかわらず、障害者数は年々増加しています。一方、障害福祉サービスの施設数や実際に利用している人数はどうでしょうか。
2018年 | |
事業所数 | 142,118か所 |
利用実人員 | 137.2万人 |
2018年の障害者数「936.6万人」に対し、障害福祉サービスを利用している人数は「137.2万人」と、需給差が出ていることがわかります。
実際には、障害福祉サービスの供給が間に合っている場所とそうでない場所がありますが、全体的にみると需要過多の傾向が強いといえるでしょう。
- https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-01-02.html
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/18/dl/gaikyo.pdf#page=6
障害福祉サービスを利用できる対象者
障害福祉サービスを利用できる方は、次の4種類の障害を持つ方です。
身体障害者
身体障害者とは、身体機能に何らかの障害がある方です。根拠法は、「身体障害者福祉法」。身体障害の例は、次のとおりです。
・上肢や下肢の麻痺、四肢麻痺
・視覚や聴覚の障害
・内部障害 など
知的障害者
知的障害者とは、発達時期に脳の障害が生じたために、知的機能の遅れが生じている方です。根拠法は、「知的障害者福祉法」。知的障害の例は、次のとおりです。
・人付き合いが苦手
・複雑な話が理解しにくい
・特定の物や事に対するこだわりが強い など
精神障害者
精神障害者とは、精神疾患などによって生きづらさを感じている方です。根拠法は、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」。精神障害の例は、次のとおりです。
・うつ病
・統合失調症
・てんかん など
発達障害者
発達障害者とは、生まれつき何らかの障害がある方です。根拠法は、「発達障害者支援法」。生まれたときに障害が発覚した場合は「知的障害」、成長してから発覚した場合は「精神障害」に分類されることが多いです。
そのため、障害福祉サービスや手帳では、身体障害・知的障害・精神障害のいずれかに該当します。しかし、発達障害ならではの特徴や対応が求められるため、「第4の障害」として考える事業者が多くなってきています。
発達障害の例は、次のとおりです。
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
・広汎性発達障害(自閉症) など
障害福祉サービスの分類
障害福祉サービスは、サービスを受けられる場所や給付目的、自立度によって分類できます。
【場所による分類】
①自宅で受けるサービス(訪問系)
②事業所で受けるサービス(日中活動系・就労系)
③住まいで受けるサービス(施設系・居住支援系)
【給付目的による分類】※給付:目的のために投入される公的なお金
①介護給付(介護など日常生活のサポートを目的とした給付)
②訓練等給付(自立や能力向上を目的とした給付)
【自立度による分類】
①障害支援区分1~6
②区分条件なし
障害支援区分は簡単にいうと、「必要な支援の度合い」です。支援を多く必要とすれば、区分は高くなります(区分6に近づく)。詳しくは、次項「障害支援区分とは」をご確認ください。
以上を踏まえて障害福祉サービスを分類した表は、次のとおりです。
サービス名 | 内容 | サービスを受ける場所 | 給付 | 自立度 |
居宅介護
(ホームヘルプ) |
入浴、排せつ、食事などの介護を行う | 自宅 | 介護給付 | 区分1以上
通院介助は区分2以上 |
重度訪問介護 | 重度障害者に、入浴、排せつ、食事などの介護や、外出時における移動支援などを総合的に行う | 自宅 | 介護給付 | 区分4以上 |
同行援護 | 視覚障害者の移動に必要な情報提供(代筆・代読を含む)、移動の援護などの外出支援を行う | 自宅 | 介護給付 | 区分の条件なし |
行動援護 | 自己判断能力が制限されている人が安全に生活できるよう、必要な支援や外出支援を行う | 自宅 | 介護給付 | 区分3以上 |
重度障害者等
包括支援 |
介護の必要性が非常に高い人に、居宅介護など複数のサービスを包括的に行う | 自宅 | 介護給付 | 区分6 |
短期入所
(ショートステイ) |
介護者が病気になったときなどに、短期間(夜間も含む)施設などで入浴、排せつ、食事などの介護を行う | 事業所 | 介護給付 | 区分1以上 |
療養介護 | 医療と常時介護を必要とする人に、機能訓練や療養上の管理、看護、介護および日常生活の世話を行う | 事業所 | 介護給付 | 区分5以上 |
生活介護 | 常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行う
また、創作的活動や生産活動の機会を提供する |
事業所 | 介護給付 | 区分3以上
(施設等の入所者は区分4以上) 50歳以上は区分2以上 (施設等の入所者は区分3以上) |
施設入所支援 | 施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事などの介護を行う | 住まい | 介護給付 | 区分4以上
(50歳以上は区分3以上) |
共同生活援助
(グループホーム) |
夜間や休日、共同生活を行う住居で、入浴、排せつ、食事などの介護を行う | 住まい | 訓練等給付 | 区分条件なし |
自立生活援助 | 1人暮らしに必要な力を補うために、定期的に自宅を訪問する | 自宅 | 訓練等給付 | 区分条件なし |
自立訓練
(機能訓練) |
自立した生活ができるよう、一定期間、身体機能向上に必要な訓練を行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし |
自立訓練
(生活訓練) |
自立した生活ができるよう、一定期間、生活能力向上に必要な訓練を行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし |
就労移行支援 | 一般企業などへの就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識や能力向上のための訓練を行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし
一般就労を目指すイメージ |
就労継続支援A型 | 一般企業などでの就労が困難な人を雇用し、働く場を提供しながら、就労に必要な知識や能力向上のための訓練を行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし
一般就労を目指すイメージ |
就労継続支援B型 | 一般企業での就労や就労継続支援A型の利用が困難な人に、働く場を提供しながら、就労に必要な知識や能力向上のための訓練を行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし
A型を目指すか、B型を継続するイメージ |
就労定着支援 | 一般企業に就労した方に、就労に伴う課題に対応するためのサポートを行う | 事業所 | 訓練等給付 | 区分条件なし |
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/taikei.html
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
障害支援区分とは
障害支援区分とは、障害者にとって「どれくらいの支援が必要か」を表した数字です。必要とする支援が多くなるほど、区分は高くなります(区分6に近づく)。
似ている区分として「介護区分」がありますが、こちらはあくまでも「身体の状態」や「障害の重さ」から判断される数字です。
例えば、両足切断者の場合、介護区分は高くなります。しかし、両足に義足を付けて生活できている場合は、必要とする支援が少なくなるため、障害支援区分は低くなるでしょう。
一般的に、「障害が重い」とされるのは「区分4以上」。これは、消防法上、区分4以上の方が重度障害者とされ、必要とする消防設備が多くなるからです。
障害支援区分は、市町村への申請から始まり、認定調査員の調査や主治医の意見書などを踏まえて判定。認定調査は80もの項目があり、総合的に判断されます。具体的な調査項目は、次のとおりです。
【移動や動作等に関連する項目】12項目
寝返り、起き上がり、移動、衣服の着脱など。
【身の回りの世話や日常生活等に関連する項目】16項目
食事、入浴、薬の管理、買い物など。
【意志疎通等に関連する項目】6項目
視力、聴力、コミュニケーション、読み書きなど。
【行動障害に関連する項目】34項目
大声・奇声、暴言暴行、徘徊、不潔行為など。
【特別な医療に関連する項目】12項目
点滴の管理、透析、経管栄養、じょくそうの処置など。
また、以上の調査などを経た各区分の判定率は、次のとおりです(令和元年度~令和2年)。
非該当 | 区分1 | 区分2 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 | 合計 |
50件 | 4,890件 | 48,706件 | 52,105件 | 45,015件 | 35,806件 | 54,663件 | 241,235件 |
0.0% | 2.0% | 20.2% | 21.6% | 18.7% | 14.8% | 22.7% | 100.0% |
この表をみると、区分2~3が約4割を占めていることがわかります。
障害福祉サービス利用の流れ
障害福祉サービスの利用は、下図のような流れで進んでいきます。
ちなみに、国保連(国民健康保険国体連合会)は、利用者というよりも、事業所側との関わりが大きい組織。障害福祉サービス事業所に入る障害福祉サービス費は、国保連から給付される費用であり、事業所の収益のほとんどを担うからです。
以上の流れについて、”利用者(障害当事者)目線”の具体的な例を用いながら、さらに詳しく見ていきましょう。
Step.1 初期相談
例えば、家族の介護を受けながら、自宅で生活している四肢麻痺の方(Aさん)がいるとします。Aさんや家族が年を重ね、支援負担が大きくなってきたとき、「障害福祉サービスの○○を使いたい!」と申請できるでしょうか。
ほとんどの場合、いきなり特定のサービスに絞って申請するということはありません。障害福祉サービスにはどんなものがあるか、自分たちに適したサービスがどれか、分からないからです。そのため、まずはAさんや家族、近隣の住民などが、「困っているんですけど…」と市区町村の障害福祉課や相談支援センターなどへ相談するところから始まります。
先に挙げた例であれば、家族の支援負担を減らすために居宅介護(ホームヘルプ)や短期入所(ショートステイ)を利用することが考えられます。あるいは、将来を見据えて、施設やグループホームへの入所を検討することもできるでしょう。
Step.2 障害福祉サービスの申請
初期相談の中である程度「支援の方向性」が見えたら、市区町村へ希望するサービスの利用申請を行います。Aさんの例で「短期入所」を選択した場合、「障害支援区分1以上」が条件となるため、次のステップへ移行します。
Step.3 障害支援区分認定
市区町村の認定調査や医師の意見書などから、障害支援区分が認定されます。Aさんの場合、支援の必要性から「障害支援区分4」と認定されたため、希望する短期入所の利用が可能となります。
Step.4 サービス利用支給決定
申請者本人や家族の状況、要望などを踏まえ、サービスの支給量が決定されます。Aさんの場合、「15日/月」の短期入所利用が決定されました。
Step.5 サービス等利用計画の作成と提出
決定された支給内容に基づき、相談支援事業者が「サービス等利用計画」を作成し、市区町村の障害福祉課へ提出します。
Step.6 サービス利用スタート
相談支援事業者と連携した上で、サービス提供事業所を契約を結び、サービスの利用が開始されます。Aさんは、B事業所の短期入所を「2週に1回、5日ずつ」利用することに。障害支援区分4のため、「家族が倒れてしまった」など万が一のときのために、施設入所も検討しながら短期入所を利用しています。
障害者施設の利用者負担額
障害福祉サービスは、所得に応じた利用負担上限額が定められています。自己負担額は、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、上限額以上の負担は生じません。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※2
入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く※3 |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象
※2:収入がおおむね600万円以下の世帯が対象
※3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は市町村民税課税世帯の場合、「一般2」が適用される
また、所得を判断する世帯の範囲は、次のとおりです。
種別 | 世帯の範囲 |
18歳以上の障がい者
(施設に入所する18・19歳を除く) |
障害のある方とその配偶者 |
障がい児
(施設に入所する18・19歳を含む) |
保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
障害福祉サービスを利用する際には、どの所得種別に属するのか、そして利用負担上限額がどれくらいなのか把握しておきましょう。