【経営者が知っておきたい】障害者グループホームで起きるトラブルとその対応方法

2023.10.28 #グループホーム(共同生活援助)#経営について#障がい福祉について


障害者グループホームでは、年齢や障害が異なる複数人の利用者が一緒に生活します。そのため、時にはトラブルが発生してしまい、頭を悩ませる経営者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、障害者グループホームで起きるトラブルの例と、その対応方法を紹介します。

障害者グループホームで起きうるトラブル

障害者グループホームで起きうるトラブルは、大きく分けると「利用者が引き起こすトラブル」「従業員が引き起こすトラブル」の2つがあります。ここでは、それぞれの具体例を見ていきましょう。

また、障害者グループホームの経営でお悩みの方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。

【意外と多い失敗例】障害者グループホーム経営の落とし穴と改善策

利用者が引き起こすトラブル

利用者が引き起こすトラブルとしては、「行方不明」や「騒音」「暴力」「近隣トラブル」が挙げられます。具体的なトラブル例は、次のとおりです。

・誰にも言わずに外出し、行方不明になる

・大声や奇声、独り言がうるさい

・バタバタと走り回る(特にマンション・アパートにある障害者グループホーム)

・他利用者や従業員を叩く

・障害者グループホームの窓から、隣の家を長時間のぞく

・ゴミ収集所で近隣住民のゴミをあさる

従業員が引き起こすトラブル

従業員が引き起こすトラブルとしては、「虐待」や「金銭トラブル」が挙げられます。具体的なトラブル例は、次のとおりです。

・叩く・つねる、不必要な身体拘束などの身体的虐待

・暴言などの心理的虐待

・コールが鳴っても返事しない、必要な支援をしないネグレクト(放置)

・利用者の金銭や貴重品を窃盗する

障害者グループホームで起きるトラブルの対応方法

では、障害者グループホームでトラブルが発生したとき、どのように対応すれば良いのでしょうか。ここでは、それぞれのトラブルを未然に防ぐ方法【防止策】と、実際に起きてしまった場合の対応【対応策】を紹介します。

利用者が引き起こすトラブルの対応方法

利用者が引き起こすトラブルに対する対応方法は、トラブルの内容にかかわらず、共通する点が4つあります。

1つ目は、「日頃からコミュニケーションを密にする」ということです。障害によっては、自分の気持ちを上手に伝えることができず、もどかしい思いから騒音・暴力といった行動に出てしまう場合も。そのため、日頃から利用者と密にコミュニケーションし、気持ちを吐き出す機会があると良いでしょう。

2つ目は、「従業員全員で統一した対応を取る」ということです。障害によっては、1回の注意で改善することは難しい場合もあります。そのような場合は、気長に繰り返し注意していく必要も。しかし、職員によって対応がまちまちだと、利用者は混乱し、余計に問題が大きくなりかねません。

3つ目は、「他施設の従業員へ協力をあおぐ」ということです。例えば、行方不明者が出た場合、事業所の少ない従業員だけで探すには限界があります。探す間にも、他利用者へ対応する人員も必要です。緊急時に協力し合える体制が整っていると、安心でしょう。

4つ目は、「ホームでの様子を定期的に家族へ報告する」ということです。問題となる行動が発生した場合も報告し、改善しない場合はいずれ利用中止になる可能性もあることをしっかり説明しましょう。

しかし、以上の対応を徹底しても、障害者グループホームでの生活を継続することが難しい利用者も少なくありません。そのような場合は、利用契約の履行が困難と判断し、退所や他施設への転居を促す場合もあります。

逆に転居希望の利用者を受け入れるとき、事前情報などでトラブルがないか確認しましょう。入居後のトラブルが容易に想像できる利用者の場合は、現在入居している利用者を守る意味でも、受け入れを拒否することができます。

利用者を確保する段階でトラブルを避けたい場合には、事業所のWEBサイトに受け入れ条件を明記するのも1つの方法です。当社ではWEBサイト制作サービスも展開していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

行方不明への対応

【防止策】

・所在の確認(食事、入浴など、節目節目に自然と)

・事務所などと連携、情報共有(特に玄関の出入り)

・夜間の施錠の徹底

・徘徊などの行方不明リスクがある人は、特に注意深く目配り気配りする

(事前に情報共有する) 

・人感センサー付チャイムなどの設備を整える

・日頃から地域とのネットワークを築いておく

【対応策】

・最後に見かけた場所、時間の特定

・職員総出で捜索

・家族へ連絡、状況説明

・(見つからない場合)警察に捜索願を提出

騒音への対応

【防止策】

・吸音材、防音パネルなどの防音対策を施す

【対応策】

・大声や奇声を繰り返すときには場所を変える(他利用者と距離を置く)

暴力への対応

【防止策】

・事前情報で暴力行為がある場合は、受け入れを拒否する

【対応策】

・暴力を振るった人、振るわれた人の前後の行動、発言から理由をさぐる

・暴力はダメなことだと繰り返し注意する

(知的障害などで理解が得られない場合は、他利用者と距離を置くよう配慮する)

・介護記録には、ありのままの情報を正確に記載する

  例 × 「○○さんが□□さんに暴力を振るった」

    ○ 「○○さんが□□さんの頭を手の平で叩いた」

近隣トラブルへの対応

【防止策】

・開業前には住民説明会で丁寧に、誠意を持って説明する

・前述のような施設内で可能な防止策を徹底する

【対応策】

・誠意をもって謝罪し、対応策を講じていることを説明する

・近隣住民との交流機会を持つ(障害者に対する負のイメージを払拭する機会)

根本的な改善

こういった所謂「問題行動」と言われる行動は「行動障害」と呼ばれています。行動障害が出る条件としては、「その利用者の行動特性(どんな行動をするか)」、そして「行動を引き起こす環境(どんな環境でその行動が出るか)」の2つです。

行動障害は、本人も苦しんで何か訴えようとした末に起きます。例えば、奇声を発するという行動には、次のような背景が隠れていることが多いです。

・上手くいかないことへの不満の発散

・何か要求するときの行動パターン

・本人なりのコミュニケーション

このような問題行動を根本的に改善するためには、色々な行動パターンから特性と環境を分析して、環境を整える…つまり、本人が過ごしやすい環境を作るということが大切になってきます。

しかし、行動障害に対する支援は、ある程度の知識と技術が必要です。支援ノウハウは「行動援護従業者養成研修」という研修で学ぶことができるため、経営者は従業員が研修に参加できる体制を整えましょう。

従業員が引き起こすトラブルの対応方法

従業員が引き起こすトラブルの中でも、特に虐待はあってはならないことです。しかし、介護負担に対する従業員の配置数が絶対的に足りなかったり、従業員へのケアが不十分だったりすると、職員のストレス・不満が溜まり、虐待に繋がる場合も少なくありません。

そのため、経営者は現場の意見をよく聞き、必要な人員をそろえることが大切です。また、採用後の教育体制も確立することが、新人従業員はもちろん、既存の従業員の負担を軽減させ、利用者への不適切な対応を減らすことにも繋がります。

しかし、人手が足りない状況では、なかなか採用の準備が進められない場合もあることでしょう。当社では、採用支援サービスも展開しているため、こちらまでお気軽にご相談ください。

→【採用したい方へ】「人を採用したいが、採用活動をする時間がない」

スタッフを採用したあとの教育についてもしっかり準備が必要です。弊社では動画を見るだけで研修が完了するサービスを行っています!2024年4月より義務化の各種研修にも対応中!こちらも気になる方はお気軽にご相談ください。

→障がい者グループホーム向け「スタッフ研修動画」について

虐待への対応

・虐待防止マニュアルの策定・周知

・虐待防止に関わる研修の実施

・虐待防止委員会の設置

・相談窓口の設置

・市町村、権利擁護センターに通報

金銭トラブルへの対応

・金銭管理マニュアルの策定・周知

(金庫、印鑑・通帳の別保管など)

・出納帳への記録、サビ管や管理者による定期的なチェック

・出入金時のダブルチェック

根本的な改善

従業員が引き起こすトラブルは、人員体制、書式やマニュアル・ルールの徹底など、環境整備が重要です。しかし、従業員がそもそも持っている資質にも左右されることも少なくありません。

つまり、どれだけ環境を整えても、窃盗などを繰り返してしまう人が一定数いるということ。そのため、事業所側は「とにかく人が足りないから誰でも採用する」のではなく、採用力をつけて「資質のある人材を選ぶ」という状態にしていきましょう。

障害者グループホームの経営は大変?

障害者グループホームでは年齢や障害が異なった利用者が一緒に暮らすため、時には思いもよらないトラブルが発生する場合があります。トラブルが発生した場合、その事業所だけで対応することが難しいときには、他施設の従業員や家族へ協力をあおぐことも大切です。

さらに、今回取り上げたトラブル以外にも、経営で大変なことはたくさんあります。こちらのコラムでは、経営上の落とし穴について紹介しているため、参考にしてみてはいかがでしょうか。

【意外と多い失敗例】障害者グループホーム経営の落とし穴と改善策