【経営者必見】障害者グループホームの退去要件と退去までの円滑な流れ
2023.12.02 #グループホーム(共同生活援助)#経営について#運営準備本記事は、障害者グループホームの経営者側で利用者の退去を検討している方向けのお役立ちコラムです。
場合によっては事業省側から退去を迫ることはできますが、配慮すべきポイントがいくつかあります。退去要件と合わせて確認してみてください。
障害者グループホームの退去要件とは?
障害者グループホームの利用者が退去する要件は、大きく分けると2つ。「事業所側が退去勧告する場合」と、「本人が希望する場合」です。具体的にどのようなケースがあるのか、見ていきましょう。
よくある3つの退去要件
障害者グループホームへ入所する際には、利用者本人とサービス利用契約書をかわします。この契約書に退去勧告について記載されていれば、退去要件に当てはまった場合に効力を発揮します。
では、具体的にどのような退去要件があるのでしょうか。事業所側が退去勧告に至るケースを3つ見ていきましょう。
他の利用者への迷惑行為
次のような迷惑行為が続く場合は、退去勧告へ至るケースがあります。
このような迷惑行為は、利用者全員の安全と健康を守るためにも厳正に対応する必要があります。ただし、迷惑行為があったからとすぐに退去勧告するのではなく、行動の意味や原因などを分析することも大切です。
例えば、障害者グループホームでの生活に大きなストレスを感じていたり、本人なりのコミュニケーションとして行動したりする場合もあります。このような行動は「行動障害」とも呼ばれ、職員側の対応いかんで改善する可能性も大いにあるのです。
それでもなお、障害者グループホームでの生活の維持が困難であると判断する場合、最終的な手段として「退去勧告」します。暴力行為などは発生状況を詳細な記録としても残しておくことで、退去勧告時のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
障害者グループホームで発生しやすいトラブルと対処法については、別コラムでも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
【経営者が知っておきたい】障害者グループホームで起きるトラブルとその対応方法
費用が払えない
障害者グループホームに入所している間、利用者は家賃や食費、水光熱費、日用品費などを支払う必要があります。家賃の相場は、国や自治体の家賃補助を加味すると「4万円前後」。その他費用と合わせた費用の相場は、「月々8万円前後」であることが多です。
このようなサービス利用料金が支払えない状況に陥ると、連帯保証人や身元引受人が代わりに支払うことになります。しかし、連帯保証人や身元引受人からの支払いがない場合、最終的に退去勧告に至るケースも少なくありません
また、金銭を自己管理している利用者でも、職員の知らぬ間に悪徳商法・詐欺に合ってしまい、利用料金を支払えない場合も。状況に応じて、消費生活センターへ相談したり、成年後見制度の活用を視野に入れることも大切になってきます。
出典:グループホーム入居者の生活費に関する全国緊急調査報告 11ページ
グループホーム入居者の生活費に関する全国緊急調査報告 12ページ
長期入院
障害者グループホームは、障害を持つ方が自立した生活を送れるように、職員が適宜相談に乗りながら助言・介護する施設です。全体的に障害支援区分は低く、看護師などによる医療的ケアをあまり必要としない方が多く入所しています。
そのため、長期間の入院により医療的ケアの増大が予測される場合には、退去勧告をするケースがあります。障害者支援施設をはじめとした入所系サービスでは、基本的に「3か月以上の入院」で退去勧告。しかし、空室による収益減が大きい障害者グループホームでは、「1か月以上の入院」で退去勧告をするところも少なくありません。
利用者が退去を希望する場合
「自立した生活が送れるようになったので、1人暮らしを始めたい」「このグループホームは自分に合わないから、別へ転居したい」など、利用者が退去を希望する場合があります。この場合、無理に引き留めるのではなく、それぞれの希望に応じた対応をしていきましょう。
自立して新しい生活の場を求めている場合は、相談支援センターの相談支援専門員と協力しながら準備を進めていきます。また、自治体の居住サポート事業(住宅入居等支援事業)を利用すると、住居確保がスムーズです。必要に応じて、居宅介護や移動支援などの契約も進めていきましょう。
グループホームから一人暮らしを始めた方を支援する自立生活援助事業という障害福祉サービスの指定を取って、報酬を得ながら引き続き支援をする方法もあります。
施設が合わないという理由で退去を希望する場合は、担当の相談支援専門員と協力し、他のグループホームや障害者支援施設などの転居先探しをサポート。同時に、「合わない」と感じさせる要因はどこにあったのかを探り、施設側の問題があれば改善策を検討・実施していくことも大切です。
無理なく退去してもらうために事業所側が気を付けること
障害者グループホームの退去は、利用者の自立度向上によるものをのぞき、何かしらのトラブルが原因であることがほとんど。退去勧告するにも、「利用者側に納得いただき、できれば確執なく退去いただきたい」と考える経営者が多いのではないでしょうか。
最後に、退去勧告をする際に事業所側が気をつけたいことを2つ紹介します。
退去要件を事前に伝える
障害者グループホームへ入居する際、利用者やその家族へサービス内容を説明する機会があります。その際、退去要件も合わせて説明しましょう。
また、ホームページ上でも退去要件について記載しておくと、入居を考えている方へも事前に伝えることができます。
退去勧告時の対応
一般的に、退去勧告は90日間の猶予が設けられています。その間、事業所側は適宜説明に応じ、転居先探しのサポートをする必要があります。
利用者やその家族への説明では、退去勧告へ至った経緯を客観的に伝えましょう。特に、日々の介護記録は大切な根拠となります。普段から、職員間で記録方法を統一し、説得力のある介護記録を残しておくことも重要です。また、実際に退去へ至った事例を提示すると、納得してもらいやすい場合もあります。
さらに、退去に伴って利用者側から支払ってもらう費用はないか、確認しましょう。特に暴力・破壊行為によって備品が壊れたり、居室の壁にへこみや穴ができていたりすると、原状回復のための費用が必要です。
転居先探しでは、他グループホームの他、障害者支援施設などの入所系サービスも選択肢の1つ。長期入院の場合は、病状に応じて療養病棟への転院も視野に入れましょう。