障害者グループホームの設備基準と最適な物件の見つけ方

2023.12.20 #グループホーム(共同生活援助)#運営準備


障害者グループホームとは、障害を持った方が自立した生活を送れるように支援する施設です。ニーズに対する供給がいまだ追いついていない上、高収益な事業であることから、新規参入する事業者が急増しています。

しかし、障害者グループホームを運営する物件は、さまざまな法律に定められている規定をクリアする必要があります。しっかりとした物件を選べないと、そもそも「開業できない」ということも少なくありません。

そこで今回は、障害者グループホームの設備基準と、物件選びのコツ・ノウハウを紹介します。コストをできるだけ削減しつつも、集客しやすい物件をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。

また、障害者グループホームの基礎知識について知りたい方は、こちらのコラムで紹介しています。

【運営者向け】障害者グループホームとは?知っておきたい基礎知識

さらに、開業について知りたい方は、こちらのコラムをぜひご覧ください。

【プロ直伝】障害者グループホームを開業するには?~立ち上げるまでに本当に必要なもの~

障害者グループホームとは?

障害者グループホームは複数人の障害者が一緒に暮らす、いわば「シェアハウス」です。管理者やサービス管理責任者をはじめ、世話人、生活支援員といったスタッフが、障害者の生活を365日サポートします。

サービス内容によって、3つの類型に分けられる障害者グループホーム。それぞれの詳しいサービス内容や開業時の指定基準などについては、こちらのコラムを参考にしてみてください。

【運営者向け】障害者グループホームとは?知っておきたい基礎知識

障害者グループホームの設備基準

障害者グループホームには、利用者が過ごす居室の他、トイレや浴室などの設備が必要です。ただし、これらが「そろっているから」という安易な判断で物件を選ぶのは危険。施設の立地や建物のタイプ、間取りなどをきちんと考えないと、「箱だけができて、利用者が集まらない」なんてことになりかねません。

では、具体的にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。

施設の立地

障害者グループホームは都市計画法により、市街化調整区域での開業は難易度が高いです。その他の区域で開業地を選定することになりますが、利用者目線・スタッフ目線で考えると、次のような立地が理想的です。

【利用者目線で嬉しい立地】

・コンビニやスーパー、商業施設が近くて便利

・就労支援などの通所先に通いやすい

・公共交通機関が充実している、駐車スペースがあることで、家族や友人が来所しやすい

【スタッフ目線で嬉しい立地】

・協力医療機関が近く、緊急時にも対応しやすい

・公共交通機関が充実しており、通勤しやすい

建物のタイプは?

建物のタイプは?

障害者グループホームが活用できる物件は、大きく分けると「戸建て型」「アパート型」の2つ(本体住居)。さらに、本体住居に付随して利用するアパートの一室を「サテライト型」と呼びます。

いずれも、自己所有はもちろん、賃貸物件でもOK。ただし、新築や大規模な物件はあまりおすすめできません。開業予定地の周辺にまとまったニーズがないと、なかなか満床にならない他、人材確保が難しかったり、事業が上手くいかなかったときに潰しがきかなくなったりするからです。

逆に、空き家などの既存物件であれば、建設費用などの初期投資を少なく済みます。物件確保におけるコストをできる限り削減したい方は、賃貸物件を探すと良いでしょう。

障害者グループホームの住居について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもぜひ参考にしてみてください。

【メリット・デメリットも解説】障害者グループホームの種類~戸建て型、アパート型、サテライト型グループホームの違い

建物の間取りと定員について

障害者グループホームの居室の広さは、収納設備等の面積を除いた「7.43㎡(4.5畳)以上」と定められています。個室が原則ですが、夫婦など利用上必要と認められる場合は、2人での利用も可能です。

「居室に鍵を付けなくていいのか?」という質問が多くありますが、結論としては付けなくて良いです。利用者の特性に応じて付ける必要があると判断される場合は取り付けますが、外側から鍵を空けられる仕様にしなければなりません。

定員は、事業所全体で「4人以上」。また、住居別では「1住居2人以上、10人以下」、サテライト型は「1住居1人」となっています。

具体的な間取りの例は、次のとおりです。

①戸建て型1棟(定員4名)
戸建て型1棟

上記のように余った部屋には、スタッフが待機・休憩したり、利用者の薬剤を安全に管理したりできるように、事務室を設けると良いでしょう。

②戸建て型1棟+サテライト型(定員4名+1名)
戸建て型1棟+サテライト型

サテライト型住居は、本体住居から10~20分程で行き来できる距離に設けます。主に、1人暮らしの練習をする方がサテライト型へ入居し、適宜本体住居へ通ったり、スタッフが様子を見に行ったりできるようにするためです。

③アパート型1棟(定員4名)
アパート型1棟

交流スペースは、利用者全員が入れる程の広さが必要です。

④アパート型1棟/定員7名
アパート型1棟/定員7名

ファミリータイプはアパート型ではあるものの、戸建て型のように他利用者との交流がしやすい間取りとなっています。

居室以外の設備

前述した居室の他、障害者グループホームには次のような設備が必要です。

・食堂、または居間(交流スペース)

・台所

・浴室

・洗面設備

・トイレ など

ざっくり言うと、既存の戸建てやアパートは「ほぼそのまま使える」ということになります。

物件選びでチェックしたい3つのポイント

障害者グループホームの物件選びでは、建築基準法や消防法に定められている規程もクリアする必要があります。物件にかかる費用と合わせて、それぞれチェックしていきましょう。

Point.1建築基準法

建築基準法では、物件の使用目的を示す「用途」を定める必要があります。障害者グループホームの場合、新築物件であれば建築確認申請で用途を確認。既存物件であれば、事業で使用するの床面積の合計が「200㎡を超える」場合は、用途の変更申請を行います。200㎡を超えない場合は、用途変更の申請は不要となります。

具体的な用途変更は、次のとおりです。

用途変更前の形態 建築物の用途

(用途変更前→後)

・戸建て型 一戸建ての住宅

→寄宿舎

・アパート型ファミリータイプ

・アパート型ワンルームタイプ

・サテライト型住居

共同住宅

→共同住宅

また、採光や換気のために、窓などの開口部を設けることも建築基準法で定められています。それぞれ居室の床面積を基準に、採光は「住宅の場合は7分の1以上(その他建築物は5分の1から10分の1以上)」、換気は「20分の1以上」が必要です。

ただし、建築物の用途が寄宿舎の場合は、採光面積は「7分の1以上」となっています。

Point.2消防法

障害者グループホームが関係する消防法上の用途は、「6項ロ」と「6項ハ」の2つ。用途によって、必要な消防設備が異なります。具体的には、次のとおりです。

(マンションやアパートの場合、5項ロや16項イになる場合がありますので、詳細は近隣の消防署にご確認ください)

障害支援区分 用途 必要な消防設備
グループホーム 4以上の方が

概ね8割以上

6項ロ 【全ての建築物で必要】

①消火器

②スプリンクラー設備

 (一部施設は275㎡以上)

③自動火災報知設備

④火災通報装置(③と連動)

⑤誘導灯

【条件によっては必要】

⑥屋内消火栓設備(延べ面積700㎡以上)

⑦漏電火災警報器(延べ面積300㎡以上)

⑧非常警報設備(収容人数50人以上)

⑨避難器具(20人以上※1)

上記以外 6項ハ 【全ての建築物で必要】

①自動火災報知設備

 (入居・宿泊がある場合)

②誘導灯

【条件によっては必要】

③消火器(延べ面接150㎡以上)

④屋内消火栓設備(延べ面接700㎡以上)

⑤スプリンクラー設備

 (床面積合計6,000㎡以上)

⑥自動火災報知設備

 (入居・宿泊なし、延べ面積300㎡以上)

⑦漏電火災警報器(延べ面積300㎡以上)

⑧火災通報装置(延べ面積500㎡以上)

⑨非常警報設備(収容人数50人以上)

⑩避難器具(20人以上※1)

※1:下階に病院や診療所、公衆浴場、工場または作業場、自動車車庫または駐車場、倉庫などがある場合は10人以上

このほか、防火管理者や防火責任者を定めたり、建物の耐火性能を確保したりする必要がある場合があります。詳しい条件は管轄の消防署によって異なるため、事前に確認するようにしましょう。

Point.3物件にかかる費用

低投資で始める

障害者グループホームの開業費用は、設備や内装の準備を含めると「約1000万円」かかるといわれています。しかし、既存物件を活用すると、物件にかかる費用は大幅に削減可能。他の費用と合わせても、「約300万円」で開業できるようになるのです。

障害者グループホームの施設選びを成功させるには?

障害者グループホームの物件を探すときには、「どこで探すか」という点も物件選びが成功するか否かを左右します。不動産サイトで探す開業者が多いですが、皆一様に利用するため、物件はなかなか見つかりません。

福祉施設向けの物件を専門に扱っているサイトを利用する方もいますが、実はあまり良い物件がないのが現状。そのため、物件探しは事前に入念なマーケット調査である程度絞った上で、実際に不動産屋へ相談しに行くの1番です。もちろん断られることも多いですが、その分「足でかせぐ」気持ちで、複数の不動産屋を回りましょう。

マーケット調査については、障害福祉サービスの事業所をマッピングして、グループホームの入居者が通う通所先が近隣にあるかどうかも参考にすると良いです。

マーケット調査画像

弊社では、マーケット調査、物件選定支援をはじめとした開業支援サービスを展開しています。「良い物件がなかなか見つからない」「なるべく初期投資を抑えたい」という方は、一度弊社へご相談ください。

【開業したい方へ】障害者グループホーム開業支援コンサルティング「まずは相談から」

また、せっかく良い物件を見つけても、集客活動が上手くいかなければ収益に繋がりません。弊社では、施設の魅力を伝えるWEBサイト制作をサポートいたします。効果的・効率的な集客を目指したい方は、ぜひお問い合わせください。