【プロ直伝】障害者グループホームを開業するには?~立ち上げるまでに本当に必要なもの~

2023.10.21 #開業#開業・運営ノウハウ公開


近年開業を検討される方が増えて、施設数も増加傾向にある障害者グループホーム。しかし、実際に開業するためには、多くの時間や労力が必要になってきます。

そこで今回は、開業までのフローや必要な書類などを紹介します。障害者グループホームのサービス内容やその収益モデルについて知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。

【運営者向け】障害者グループホームとは?知っておきたい基礎知識

障害者グループホームとは

一般的に「グループホーム」には、高齢者福祉の「認知症グループホーム」と障害者福祉の「障害者グループホーム」の2種類があります。今回紹介するのは、障害者総合支援法に定められている「障害者グループホーム(共同生活援助)」です。

障害者グループホームには、さらに3つのサービス類型があります。「介護サービス包括型」や「外部サービス利用型」、そして「日中サービス支援型」です。それぞれのサービスについて、より詳細な内容を知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。

障害福祉サービスとは~利用対象者・種類・入所について徹底解説~

障害者グループホーム開業までの流れと必要なもの

では実際に障害者グループホームを開業するまでには、どのような流れで準備していけば良いのでしょうか。ここでは、開業までの流れと必要なものを3つのステップに分けて紹介します。

Step.1 資金調達~開業に必要な費用・資金はどれくらい?

障害者グループホームを開業するためには、資金調達が不可欠。ゼロから障害者グループホームを立ち上げる場合は最低でも「300万~1000万円」、就労支援事業など既存の障害福祉サービスと併設する場合は「200万~800万円」は必要です。

しかし、開業資金のすべてを自己資金でまかなうのは至難の技。そんなとき、上手に活用したいのが給付金や補助金、融資といった資金調達方法となります。具体的な給付金や補助金などは、次のとおりです。

グループホーム開業時に使える給付金・補助金・助成金

国保連合会から継続的に支給されるのが「自立支援給付(訓練等給付費)」です。障害者グループホームであれば、次のような計算式から支給額が算出されます。ただし、障害支援区分によって単位数が異なる点には注意してください。

利用者1名の給付費(報酬)=(基本単位+加算単位)×日数×地域区分

例えば、障害支援区分3、人員基準4:1、夜間支援対象利用者4人、神奈川県横浜市(2級地)の方の給付費請求月額は

(基本サービス費381単位+夜間支援加算280単位)×31日×11.28円=231,138円となり、これにその他の加算に応じてプラスされていきます。

また、国や市町村からは障害者グループホームの開設にあたり、「補助金」や「助成金」が支給される場合があります。支給額や申請の受付期間については、管轄の市町村へ事前に確認するようにしましょう。

融資をもらうための交渉ポイント

金融機関などから融資してもらうのも、資金調達方法のひとつ。このとき、スムーズに融資してもらうためには、3つ注意しておくことがあります。

1つ目は、「自己資金の準備」。自己資金の有無は、事業の計画性を示す上で大切になってくるからです。

2つ目は、「福祉業界での経験」。事業の経営経験がなくても、福祉業界(高齢者、障害者)の経験があることは「運営スキルがある」とみなされやすいからです。福祉業界での人脈があると、「集客のつてがあり、利益に繋がりやすい」と好印象を与えることもできます。

3つ目は、「申請書類の実現可能性・正確さ」。融資をする側にとっては、返済してもらえるかどうかが一番大切になってきます。返済能力の有無は、申請書類に添付される事業計画や収支シミュレーションなどから判断されるため、正確で実現性が高いと納得させられるような書類を準備する必要があります。

Step.2 法人設立~福祉事業ならではの留意点

障害者グループホームを開業するにあたって、必ず必要になってくるのが「法人設立」。一般的な会社の設立と共通する部分もありますが、福祉事業ならではの留意点も少なくありません。開業準備で失敗しないためにも、法人設立についてしっかり理解していきましょう。

設立に必要な書類・手続きまとめ

障害福祉サービスは法人格があれば、種類の限定はありません。ここでは、障害者グループホームの運営法人として一般的な、営利法人である株式会社・合同会社、非営利法人である一般社団法人・NPO法人を例に挙げて、法人設立に必要な費用や書類、手続きの流れを紹介します。

法人の設立にかかる費用

法人を設立する際には、資本金や定款印紙税などの費用がかかる場合があります。法人別の設立費用は、次のとおりです。

このとき、税金が少ないからとNPOを検討されたり、開設費用が少ないからと一般社団法人や合同会社を検討されたり、何となく格好がつくからと株式会社を検討されたりする方がいます。しかし、それは一部の視点に過ぎません。

既存事業の有無、人員体制、財務税務、意思決定、事業承継、他事業展開など、さまざまな視点からどの法人格にすべきかを選んでいきましょう。

株式会社 合同会社 一般社団法人 NPO法人
最低資本金 1円以上 1円以上 資本金制度なし 資本金制度なし
定款印紙税 40,000円

(電子認証の

場合は0円)

40,000円

(電子認証の

場合は0円)

0円 0円
定款認証

手数料等

52,000円 0円 52,000円 0円
登録免許税 150,000円 60,000円 60,000円 0円

しかし、自分が目指す事業の法人について、「どの形態が最も適しているか、よく分からない」という方も多いのではないでしょうか。そのような方のために、当社では経営コンサルティングサービスも提供しています。法人設立についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

ちなみに、発起人や役員などの選出は、法人によって呼び名や人数が異なります。法人設立時に印鑑を必要とすることが多いため、こちらも参考にしてみてください。

株式会社 合同会社 一般社団法人 NPO法人
設立必要人数

(発起人)

1名以上 1名以上 2名以上 10名以上
発起人の呼称 株主 社員 社員 社員
役員 取締役1名以上 社員1名以上 理事1名以上 理事3名以上

監事1名以上

出典:https://kaigo.taskman.co.jp/seturitu/kaisetu

3種類の印鑑を準備する

法人設立時には、3種類の印鑑を準備する必要があります。1つ目が「法人実印」。一般的には二重丸の外側に回し文字で「法人名」、内側に「代表者の役職名」を彫った印鑑が使用されます。形としては、18mmほどの丸印が多いです。

2つ目は、「銀行印」。法人実印を兼用することも可能ですが、紛失や盗難のリスクを回避するためには別途作っておくと安心です。

3つ目は、「社印」。法人実印が丸印であったのに対し、社印は角印であることが一般的です。請求書などの日常的な書類に使用する印鑑となります。

法人定款を作成する

印鑑と並行して作る必要があるのが「法人定款」です。定款とは、会社の基本情報や規則が記載されたもの。いわば「会社のルールブック」ともいうべき重要な書類であり、公証役場で公的な文書にする手続きが必要です。

株式会社や一般社団法人は、定款の認証に費用がかかります。このとき最も注意したいのが、「運営目的の明記」。障害者グループホームを運営する旨を明確に記載していない場合、定款の修正で無駄な出費が重なりかねません。

定款作成時には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」としっかり記載しておきましょう。

資本金を払いこむ

この時点では法人名義の口座は作れないため、発起人代表の個人口座に資本金を振り込みます。振り込まれた通帳のコピーは、払込を証明する書類として活用します。

ちなみに、株式会社や合同会社の資本金は1円から可能です。しかし、あまりに少ない資本金は、金融機関からの融資が受けにくくなるなど、信用面でのデメリットがあります。開業後の運転資金も含め、準備する資金には余裕を持ちたいところです。

管轄の法務局へ書類を提出する

印鑑・定款が準備できたら、必要書類を準備して法務局へ提出します。株式会社を例にとると、次のような書類が必要です。

書類名 印鑑(実印) 内容
株式会社設立登記申請書 法人 15万円分の収入印紙を添付
登記事項を記載した別紙 法人 CD-Rも可
定款 発起人 公証役場で認証済みのもの
発起人の決定書 発起人
役員の就任承諾書 役員
払込を証明する書面 法人
印鑑届出書 法人、代表個人
取締役の印鑑証明書
登記完了後の手続き

問題なく書類が受理された場合は、法務局からの連絡はありません。そのため、1週間~10日ほど経ったころに、登記完了の可否を法務局へ確認しましょう。

無事に完了していたら、「印鑑カードの登録」「印鑑証明書の取得」「登記簿謄本の取得」を済ませます。これらの書類は、法人名義の口座を開設するときや障害者グループホームの物件を契約するときなどに必要です。この時点で多めに取得しておくと、忙しい開業準備の合間に行政へ赴く時間を削減できます。

Step.3 自治体から許可をもらおう

法人設立後は、障害者グループホームの指定申請の準備を進めていきましょう。

(正確には許認可制度ではなく、指定制度です)

障害者グループホームの開業で必要な3つの設置基準

指定申請をするためには、次の3つの基準をクリアする必要があります。設備基準や人員配置基準については、こちらのコラムも参考にしてみてください。

1.設備基準

障害者グループホームで利用者の方が安心して暮らせるよう、居室の広さや必要設備の設置が義務付けられています。

2.人員配置基準

障害者グループホームの開業時には、管理者はもちろん、サービス管理責任者や世話人、生活支援員の配置が必要です。

3.運営基準

障害者グループホームの運営に関しては、主に次の3つが定められています。

・事業者は個別支援計画を作成し、これに基づいてサービスを提供する。

・事業者は、利用者やその家族の意思、人格を尊重しながらサービスを提供する。

・事業者は、利用者の人権擁護や虐待の防止に必要な体制の整備を行う(従業者に対する研修など)

また、運営規程には次のような項目について明記しておきましょう。

・事業所の名称や所在地

・事業目的や運営方針

・営業日や営業時間

・利用者定員

・サービスの内容

・サービスに関する費用

・苦情解決の処置 など

自治体への申請方法と必要な書類まとめ

指定予定日の3~4か月前には、管轄の行政庁(中核市以上の自治体)へ開業の事前相談をします。その間、準備する一般的な必要書類は次のとおりです。

提出が必須なもの

指定申請書

指定に係る記載事項【付表】

位置図、住宅地図

配置図

平面図

建物の外観および内部の写真

他法令遵守の確認票

建物の検査済証の写し

防火対象物使用開始届出書などの写し

消防用設備等設置届出書の写し

設備、備品等一覧表

管理者経歴書やサービス管理責任者経歴書

実務経験(見込)証明書

サービス管理責任者研修受講証明書の写し

従業員の勤務体制及び勤務形態一覧表

運営規定

事業計画書

予算書等

バックアップ施設との契約内容がわかるものの写し

利用者またはその家族からの苦情を解決するために講ずる措置の概要

介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書

介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表

従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

定款又は寄付行為等の写し

登記事項証明書又は条例等

指定事業者欠格条項に該当しない旨の誓約書

役員等名簿

決算書等

事故防止等に関する措置

事業開始届

場合によっては提出が必要なもの

建物の登記全部事項証明書または登記現在事項証明書

建物の賃貸借契約書の写し

耐震診断の結果表の写し

スプリンクラー設備計画書

サービス管理責任者の資格証の写し

サービスの主たる対象者を特定する理由等

協力医療機関との契約内容がわかるものの写し

社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票

各種加算についての確認書類

以上のような書類の準備ができたら、管轄の行政庁へ書類を提出。チェックと審査が行われた後は、現地確認を受ける流れになります。書類の記載と実際の事業所に異なる点がないよう、設備管理などを今一度確認しておきましょう。

現地確認を無事に通過すれば、指定通知書が送付され、1日付で晴れて開業です。

指定されて終わりではない!~早めに準備したい必需品~

無事に指定が完了し、晴れて開業となるとホッと一安心することでしょう。しかし、実は指定後も開業者はさまざまな準備が必要です。ここでは、指定後早めに準備したい必需品を2つ紹介します。

利用者の確保

無事に開業できたら、利用者を呼び込むためのホームページを制作しましょう。インターネットが発達した昨今では、紙ベースよりもネット上で情報収集する支援者・障害者・家族が多いからです。

ホームページにはサービス内容の紹介はもちろん、障害者グループホーム内の写真などを掲載すると視覚的な訴求力が高まります。ホームページ制作でお悩みの方は当社でサポート致しますので、こちらまでお気軽にご相談ください。

最近ではInstagramやTwitter、facebook等のSNSから利用に繫がるケースも増えてきました。他社がやっていないこともあるので、こちらの活用も益々重要になることでしょう。

サイト制作で集客を強くしたい方はご相談ください。

→福祉業界に特化した格安のホームページ制作

採用の仕組みづくり

障害者グループホームで働く世話人や生活支援員などを採用するためには、求人広告を出すだけでなく、面談をしたり、教育したりといった採用コストがかかります。開業まもなく人手が足りない中で、すべてを事業者だけで行うことは困難です。

当社では、人材採用でお悩みの方をサポートするために、採用支援サービスも展開しています。詳しいサポート内容や費用について気になる方は、こちらまでご相談ください。(こちらのサービスは既存事業者様が対象です)

→【採用したい方へ】「人を採用したいが、採用活動をする時間がない」

また、スタッフを採用したあとの教育についてもしっかり準備が必要です。弊社では動画を見るだけで研修が完了するサービスを行っています!2024年4月より義務化の各種研修にも対応中!こちらも気になる方はお気軽にご相談ください。

→障がい者グループホーム向け「スタッフ研修動画」について

グループホーム開業失敗談

障害者グループホームの開業・運営を成功させるためには、失敗事例から学ぶことも大切です。ここでは、開業準備で失敗、あるいは開業後に失敗する人の特徴をそれぞれ3つ紹介します。具体的な失敗事例を知りたい方は、こちらのコラムと動画も参考にしてみてください。

【意外と多い失敗例】障害者グループホーム経営の落とし穴と改善策

開業準備で失敗する人の特徴

「得意なことしかやらない」「法律・ルール、文章を読む気がない」「採用できない」という人は、開業準備で失敗する可能性が高いです。例えば、物件探しが得意でも、その後に続く人材確保や支援の質の向上などを進められないと、結局開業できないことになってしまいます。

開業後に失敗する人の特徴

「マーケット調査をしていない」「推進者がいない」「営業ができていない」という人は、開業後に失敗する可能性が高いです。例えば、マーケット調査が不十分であると、せっかく開業できてもなかなか利用者が集まらない状況に陥ります。

結局グループホームの立ち上げに資格は必要?

障害者グループホームの立ち上げには、基本的に資格は必要ありません。ただし、管理者については、指定基準において次のように定義されています。

「管理者は、社会福祉法第十九条第一項各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業に二年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者(※)でなければならない。」

つまり、障害者グループホームの管理者は「社会福祉主事任用資格」を持っているか、「社会福祉事業に2年以上従事した者」であることが要件となっています。

※当社では、コンサルティングと同時に管理者研修を実施して、認められるだけの運営能力の向上、育成をしています。

業界未経験でもいける?

「興味はあるけど、経験なくても大丈夫?」

そんな不安もあるのではないでしょうか。

もちろん簡単なわけではありませんが、実際に不動産業者や飲食業者の2本目の事業の柱として展開されている方もいらっしゃいます。

このコロナ環境下では経営を支える根幹となっています。

有資格者、経験者を採用することにより、業界未経験の方でも参入可能。

経験の場合、専門家の協力があることでスムーズに進めることができます。

立ち上げノウハウ、運営ノウハウ、採用ノウハウのある開業支援業者をお選びください。

利用したいグループホームの開業支援サービス

障害者グループホームの開業には準備するものが多く、無事に開業できたとしても経営が安定化するまで時間がかかります。中には「上手くやっていけるか不安で仕方がない」という方も、多いのではないでしょうか。

当社では、開業支援コンサルティングや稼働率向上支援など、開業者・経営者向けの支援サービスを豊富に取り揃えています。障害者グループホームの開業・運営についてお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。