【運営者向け】就労継続支援B型事業とは?知っておきたい基礎知識
2023.12.15 #就労継続支援B型就労継続支援B型は、一般企業で働くことに不安がある障害者に対して、生産活動の機会を提供しながら、就労に必要な知識や技術の獲得を支援します。就労継続支援A型よりも参入しやすい事業であることから、開業者が急増している事業です。
そこで今回は、開業者が知っておきたい「就労継続支援B型の基礎知識」を紹介。収益モデルや、事業者から見たB型のメリット・デメリットも合わせて解説します。就労継続支援の開業を検討している・興味があるという方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、就労継続支援A型や就労移行支援との違いについて知りたい方は、こちらのコラムをぜひご覧ください。
【A型とB型の違い】就労継続支援事業とは?~就労移行支援・定着支援も網羅~
この記事の目次
就労継続支援B型とは?押さえておきたい4つの基礎知識
就労継続支援B型は、生産活動や生活技能訓練(SST)を通して、就労に必要な知識・技術の獲得や、問題解決能力などの育成を図ります。同じく就労継続支援であるA型とは、利用対象となる方や仕事の内容など、さまざまな点で異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
利用対象となる方は?
就労継続支援B型の対象者は、障害によって一般企業で働くことが難しい・不安がある方。就労継続支援A型と異なり、雇用契約や年齢制限はありません。
また、50歳に達している方や、障害基礎年金1級を受給している方も対象となります。いずれにおいても、障害者手帳の保有は必要ありません。
例えば、脳梗塞などの疾患により入院・退職した後、リハビリと社会参加を兼ねて就労継続支援B型を利用するケースがあります。
仕事の内容は?
就労継続支援B型の仕事内容は、就労継続支援A型よりも軽作業のものが多いといわれています。具体的な仕事内容は、次のとおりです。
・値札付けや袋詰め
・部品の加工、組立
・パンやクッキーなどのお菓子作り、販売業務
・飲食店での調理補助
・ミシンや刺繍などの縫製業務
・衣類やリネンなどのクリーニング
・農作業
細かい作業が多いものの、勤務時間は就労継続支援A型よりも短め。その分、給料は少なめです。しかし、自分の体力や体調と相談しながら比較的自由に働ける点は、大きなメリットといえるでしょう。
ここで一つ例をご紹介します。
岡山県の総社市の障害福祉施設では「デニムマスクづくり」を就労継続支援B型の事業として行い一時話題となりました。
その二か月後には関係のある仙台市の施設が作り始め、こちらも予約が殺到しました。
コロナ渦でB型の仕事がなくなってしまうケースが続出する中、デニムマスクにいち早く着手した岡山県総社市の取り組み。
地域の特産品を生かし、市場に必要なものを生産し、販売して利用者の工賃を確保する、素晴らしい取り組みですね。
■仙台×総社デニムマスクについてはこちら(仙台市のホームページに遷移します)
平均工賃(給料)はいくら?
令和2年度における就労継続支援B型の平均工賃(給料)は、次のとおりです。
平均工賃 | 施設数 | 令和元年度(参考) | |||
月額 | 時間額 | 月額 | 時間額 | ||
就労継続支援B型
(対前年比) |
15,776円
(96.4%) |
222円
(99.6%) |
13,441か所 | 16,369円 | 223円 |
前年度にくらべ、平均工賃は月額・時間額ともに若干減少しています。実際の時間額は100円~400円以上と、事業所によってばらつきが大きいです。政府によって工賃を向上させる取り組みは進められていますが、まだまだ低い状況と言わざるを得ません。
ちなみに、就労継続支援B型の工賃は、仕事の売上から支払うように定められています。例えば、諸経費を考慮しないで考えた場合、100円の商品を100個売れば「10,000円」、300個売れば「30,000円」の売上から工賃を支払います。
一方、就労継続支援B型の事業収入は、訓練等給付費から得られます。つまり、商品が売れようが売れまいが、事業収入に影響はありません。
利用負担額はいくら?
就労継続支援B型をはじめとした障害福祉サービスでは、所得に応じた負担上限月額が4区分定められています。具体的な利用負担額の上限は、次のとおりです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税非課税世帯
(所得割16万円未満)※2 |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象
※2:収入が概ね600万円以下の世帯が対象
また、入所施設利用者(20歳以上)やグループホーム利用者が市町村民税課税世帯の場合は「一般2」が適用
表に記載した負担上限月額は、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。具体的な利用料については自治体によって異なる場合があるため、詳しく知りたい方は事前に管轄の行政庁へ問い合わせましょう。
就労継続支援B型の収益モデル
就労継続支援B型の基本報酬は、令和3年度の報酬改定で変更がありました。平均工賃月額に応じた報酬体系においては、これまで7段階の評価だったところが8段階になり、単位数も増えています。
また、利用者の就労や生産活動などへの参加を一律で評価する報酬体系も新設。基本報酬は従来のものか、新設されたもののいずれかを、各年度の4月に選択して算定していきます。ただし、年度途中で報酬体系の変更はできません。
では実際に就労継続支援B型を開業した場合、どのくらいの収益を得られるでしょうか。ここでは、20名定員の事業所を例にシミュレーションしたものを見ていきましょう。
入金額の計算
シミュレーションする事業所の設定は、次のとおりです。
・定員20名、施設外就労なし
・平均工賃月額 1.5万円以上2万円未満
・月23日(週休2日、100%稼働)
・人員配置 7.5:1
・地域単価 10円
・作業収益 30万円
【平均工賃月額に応じた報酬体系を適用した場合】
利用者数×稼働日数×基本報酬×地域単価+作業収益
=20×23×611×10+300,000
=3,110,600円
【新設された報酬体系を適用した場合】
利用者数×稼働日数×基本報酬×地域単価+作業収益
=20×23×556×10+300,000
=2,857,600円
ただし、実際は稼働率が8割ほどの事業所が少なくありません。8割稼働とすると、入金額はそれぞれ次のようになります。
【平均工賃月額に応じた報酬体系を適用した場合】
2,488,480円
【新設された報酬体系を適用した場合】
2,286,080円
支出額の計算
シミュレーションする事業所の利用者数・人員配置の割合から、支出額は次のように算出されます。
【職業指導員と生活支援員の必要人数】
利用者数÷人員配置基準=20÷7.5≒2.7人
【人件費の計算】
・管理者(サビ管兼務) 300,000円
・職業指導員 常勤1名 200,000円
・職業指導員 非常勤0.9人 150,000円
・生活支援員 非常勤0.8人 160,000円
・利用者 20名×工賃17,000円=340,000円
合計 1,150,000円
【その他経費の計算】
・建物賃料 180,000円
・水光熱費 40,000円
・通信費 30,000円
・その他 100,000円
合計 350,000円
つまり、支出額は合計で「1,500,000円」。入金額と合わせて考えると、月の収益は従来の報酬体系で「988,600円」、新設の報酬体系で「786,080円」となります。ただし、あくまでも試算のため、実際はこの限りではありません。
就労継続支援B型の利用者と運営者の関係
就労継続支援の開業を考えている方の中には、A型とB型のどちらを開業した方が良いか、迷う方も多いのではないでしょうか。そこで今度は、利用者と運営者側から見た就労継続支援B型のメリット・デメリットを紹介します。
メリット・デメリットを把握した上で、就労継続支援B型の開業を再検討してみてください。
利用者側から見た就労継続支援B型
就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため、自分の体力や体調に合わせて比較的自由な働き方が可能です。この点は、一般企業への就労に不安がある方にとって、大きなメリットになります。
ただし、その分月々の工賃は非常に少なくなっています。そのため、工賃を目的とするよりは、リハビリや社会参加を目的とした方が有意義な時間として利用できるでしょう。
運営者側から見た就労継続支援B型
就労継続支援B型は、工賃体系や就労体系を比較的自由に組むことができるメリットがあります。そのため、加算をしっかり取得することで、A型には劣るものの収益の確保は可能です。
ただし、年々増加する事業所や報酬改定などにより、これまでのような「ただの受け皿」として運営するだけでは収益性は見込めません。A型同様、ビジネス性を追求する姿勢と工夫が必要になってきています。
また、スタッフもなかなか確保しづらく、採用に手間取る可能性も高いでしょう。就労継続支援B型に必要なスタッフ数や採用については、こちらのコラムをぜひ参考にしてみてください。
【B型】就労継続支援B型の人員配置基準と最適な人材採用の対応方法
就労継続支援B型の開業は年々増加していますが、安定的な運営のためには相応の工夫と経営努力が必要です。今回紹介した基礎知識をしっかりと理解して、スムーズな開業と運営を目指しましょう。
また、就労継続支援A型や就労移行支援との違いを踏まえて開業する事業を決めたい方は、こちらのコラムをぜひご覧ください。