【A型とB型の違い】就労継続支援事業とは?~就労移行支援・定着支援も網羅~
2023.12.05 #就労継続支援A型#就労継続支援B型「障害があっても、働きたい…!」そんな想いをサポートするのが、障害福祉サービスの1つである「就労支援」です。
今回は、就労支援の中でも「就労継続支援」をピックアップ。これから開業する方も含めて、事業者側が知っておかないとまずい基礎知識を紹介します。
この記事の目次
就労継続支援とは?
就労継続支援とは、障害によって一般企業で働くことが難しい方を対象として、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。事業所の管理者やサービス管理責任者をはじめ、職業指導員や世話人、生活支援員が利用者をサポートします。
また、就労継続支援には、雇用契約の有無によって「A型」と「B型」の2種類があります。まずは、この2つの違いについて見ていきましょう。
就労継続支援A型とB型の違いまとめ
就労継続支援A型・B型の違いをまとめると、次の表のようになります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
目的 | 就労や生産活動の機会の提供 | 生産活動や生活技能訓練の機会の提供 |
対象者 | 一般企業で働くことが難しい方 | 一般企業で働くことが難しい方 |
雇用契約 | あり | なし |
賃金 | 給与
(月平均78,975円) |
工賃
(月平均16,369円) |
年齢制限 | 原則65歳未満
(要件クリアで65歳以上も可) |
なし |
利用期間 | 定めなし | 定めなし |
このように、就労継続支援A型・B型には共通する部分はあるものの、異なる部分も数多くあることがわかります。今度は、A型・B型の対象者や事業目的、作業例をそれぞれ見ていきましょう。
就労継続支援A型とは?
就労継続支援A型は、障害によって一般企業で働くことが難しい・不安がある方が対象です。特別支援学校の卒業後に行った就職活動で雇用に結びつかなかった方や、過去に就労経験があるものの、現在は雇用関係の状態にない人も対象となっています。雇用契約を結び、給与が発生することから、一般企業の勤務形態とあまり変わりはありません。
以前までは、利用できる障害者は「65歳未満」という制限がありました。しかし、平成30年4月からは、65歳以上でも利用の必要があると判断された場合は、所定の手続きを踏むことで「最大1年間の継続利用」が可能となっています。
就労継続支援A型の事業目的は、就労や生産活動の機会を提供しながら、就労に必要な知識や技術などの獲得を支援すること。生産活動の例は、次のとおりです。
・公共施設や企業、ホテルなどの清掃
・レストランやカフェなどの接客や調理
・パソコン業務(データ入力、ホームページ更新など)
・農作業(パック詰め、出荷など)
・梱包作業
就労継続支援A型について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。
【A型】就労継続支援A型の人員配置基準と最適な人材採用の対応方法
就労継続支援B型とは?
就労継続支援B型の対象者はA型同様、障害によって一般企業で働くことが難しい・不安がある方です。50歳に達している方や、障害基礎年金1級を受給している方も対象となります。就労継続支援A型とは異なり、雇用契約や年齢制限はありません。
就労継続支援B型の事業目的は、生産活動の機会を提供しながら、就労に必要な知識や技術の獲得を支援すること。また、生活技能訓練(SST)を通して、社会生活の中で困った場面に遭遇した場合の問題解決能力の育成、社会環境から受けるストレスを緩和する方法の獲得も目指します。
生産活動は、就労継続支援A型よりも比較的軽い作業が多いといわれています。
・袋詰め
・部品の加工
・お菓子作りや販売業務
・刺繍などの縫製業務
・衣類などのクリーニング
就労継続支援B型について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。
【B型】就労継続支援B型の人員配置基準と最適な人材採用の対応方法
就労継続支援の収益性
次に、就労継続支援の収益性について考えてみましょう。就労継続支援A型の利用者は作業能力が比較的高いため、施設外就労でも売上アップに貢献してくれます。また、雇用助成金も利用でき、B型よりも事業の収益性が高いといわれています。
ただし、雇用契約を結ぶことで、雇用保険や健康保険などの整備が必要だったり、人件費などのコストが増えたりするデメリットも。A型は最低賃金以上の給与を支払うため、収益事業を営むビジネス的観点も求められます。
さらに、法改正による締め付けが年々強くなってきていることから、単純に「就労継続支援A型は、B型よりも儲かる」とは言えなくなってきている状況です。
一方、就労継続支援B型は取り組める作業が限られているため、A型のような売上アップはなかなか見込めません。しかし、工賃体系や就労体系を比較的自由に組むことができる上、加算をしっかり取得すれば収益の確保は可能です。
ただし、B型の福祉報酬は、利用者に支払う工賃の額によって変動するよう改定されています。そのため、これまでのような「ただの受け皿としてB型を運営」していても収益性は見込めず、ビジネス性も求められるようになってきました。
また、忘れてはならないのが、事業を運営する上では利用者を支援する職員の確保が不可欠であること。職員が不足していては、いくら収益を上げようとしても、事業は上手く回りません。就労継続支援事業の開業を検討中の方は、以下のコラムも参考にしてみてください。
【A型】就労継続支援A型の人員配置基準と最適な人材採用の対応方法
【B型】就労継続支援B型の人員配置基準と最適な人材採用の対応方法
また、「A型とB型、どちらを開業すべきか、よくわからない」という方も多いことでしょう。弊社では開業支援サービスを展開していますので、お気軽にご相談ください。
就労移行支援との違い
障害福祉サービスには、就労継続支援のほかに「就労移行支援」があります。就労移行支援の対象者は、一般企業への雇用が可能と見込まれ、就職を目指す障害者です。就労継続支援と同様、対象となる方は「65歳未満」あるいは「利用継続が認められた65歳以上」。
就労継続支援と大きく異なる点は、賃金が発生しないこと、そして利用期間が「原則2年以内」と定められていることです。事業所は限られた期間の中で、生産活動や職場体験などの機会を提供しながら、求職活動や利用者の適性に応じた職場の開拓の支援を行います。
就労定着支援との違い
就労移行支援などを経て一般企業に雇用された障害者は、「就労定着支援」を受けることができます。就労定着支援は、雇用された企業で働き続けることができるよう、次のような支援を行います。
・日常生活や社会生活上の相談や指導、助言
・関係機関(企業や事業所など)との連絡調整
利用期間は、就職後7か月目から3年6か月までの「3年間」が上限。1年ごとに支給決定期間の更新が必要です。3年が経過した後も就労定着支援を受けたい場合は、そのまま同事業所で対応するか、障害者就業・生活支援センターへ引き継ぎます。
また、就職前には事前支援期として、本人と就労目標を整理したり、雇用先へ配慮してほしい事項などを説明・調整したりします。つまり、就労定着支援は就労を希望する障害者にとって、「就職」という大きなゴールに向かうときに支えてくれる最後の支援事業なのです。
就労継続支援と移行支援、定着支援
ここまで紹介した就労継続支援と移行支援、定着支援の違いは、次のとおりです。
就労継続支援 | 就労移行支援 | 就労定着支援 | ||
A型 | B型 | |||
対象者 | 一般企業で働くことが難しい方 | 一般企業で働くことが難しい方 | 一般企業への就職を希望している方 | 一般企業に就職した方 |
目的 | 就労に必要な知識や技術などの獲得 | 就労に必要な知識や技術などの獲得/問題解決能力やストレス耐性の獲得 | 求職活動の支援や利用者の適性に応じた職場の開拓 | 働き続けられる職場環境の調整/仕事と生活の両立における不安の解消 |
年齢制限 | 65歳未満 | なし | 65歳未満 | なし |
利用期間 | 定めなし | 定めなし | 2年以内 | 3年以内 |
事業の収益性としては、法改正などの影響により、「○○が一番いい!」と言い切ることは難しくなっています。さらにビジネス+福祉を同時に行うため、どちらの知識も求められますし、マーケティング力で差が生まれます。
就労支援事業の開業を検討中の方は、障害福祉サービスの開業支援を行っている弊社へ、ぜひ一度ご相談ください。